『被験者、生還。第一実験は成功しました。』



機械アナウンスで、俺はゆっくりと瞼を開けた。



帰ってきたか。

俺の、時間に。



まさか別れ際にあんなこと言われるなんてな。



喧嘩ばかりした日々。


あの日も……
くだらない事で喧嘩して、
暁が家から飛び出していって、
そして…そのまま……
俺を嘲笑うかのように、神様は交通事故と言う形で、暁の命を奪った。



君がいないこの世界は、地獄だ。




「暁には……適わないな。」
「――誰に適わないって?」
「――!?」



背後に聞き覚えのある声。


振り返った視線の先。



「暁……!!」
「ん?」
「どうして……?」


ああ、そっか。
未来が変わったんだ。



「修平?大丈夫?」
「……ははは、そっか。うん、大丈夫。」
「変なの。ご飯食べに行こうよ。」



俺は近付いて暁に触れてみた。

温かい。


「なに?」
「何でもない。行こう。」
「今日ほんと変。」
「暁、俺のこと好き?」
「いきなり何?」
「言ってよ。」
「………どーせ過去の僕に聞いたんだろ?」
「なんだ、覚えてたの?」



暁は笑って、当たり前だといった。



「あの時は半信半疑だったけど、ここでようやく繋がった。」
「疑ってたんだ?」
「そりゃそうでしょ。未来から来たなんて、当時じゃあり得ないから。」



苦笑する暁に釣られて俺も笑った。


「で、俺のこと好き?」
「………変わってないよ、答えは。」
「そ。」
「うん。」



過去で手にしたのは、未来の希望。



~END~