「ただいまー」


重く軋む玄関を開けて
いつもの調子で叫ぶ。


「おかえり。
今日は遅かったわね~。
もう7時過ぎよ」


のれんを手でかきわけ
お母さんが顔を出した。


「うん。
今日は学校に残って勉強してたの」


「あら、珍しい。
あっ。だからか。
明日が雨なのは」


お母さんはけたけたと
笑ってまた台所へ戻った。


台所からは、おいしそうな匂いが漏れていた。


あたしは匂いに誘われるように、台所へと吸い込まれていった。


明日は雨─
じゃあ、体育はお休みかな。