午前0時に口づけを


「ジュリお姉さま、アリー、ピアノ聞きたいです!」

「勝手に弾いてもよろしいのかしら?」

「構わない。使ってくれ。」

私とアリーの会話にシリルが口を出す。

でも、まぁ。今の口出しはよしとしてあげようかな。

「じゃぁ、遠慮なく。」

私はピアノの前に腰を下ろす。

「では、宮廷楽団の曲で、〝尊し父なる国〟。」

威厳が曲に表れている、かっこいい曲。

私は、この曲が大好きだ。

この国の初代国王をモデルにした曲。

この国でこの曲を知らない人などいない。

「僕も入ってもいいか?」

シリルがヴァイオリンを持ち出した。

私は頷く。

ヴァイオリンが入れば少しは変わる。

もっと、この曲に近づく。

まずは私のピアノから・・・。

そして、シリルのヴァイオリンが入る。

綺麗な音・・・。流石シリル。


急に音が途切れるような大きな音がした。

それは扉の、開く音だった。