午前0時に口づけを



「ジュリエッタ様。」

「セイル、すぐに出発する。時間がかかるからな。」

ドレスや、謁見のための服を、トランクに詰める。

そして、それと共に、紐をいれる。

あとは、短剣や、銃。

それから、枕。

「枕?」

「枕がなければ眠れない。あの家は、長いこと使ってないからな。」

「子供みたいだな。」

「私は子供だ。」

私の言葉にセイルもとい、レッドは、笑い出す。

「お前は子供である前に伯爵だろ?」

そうだった……。

私は子供である前にバルニエール伯爵…

「そうだったな。私はバルニエール伯爵だ。」

自分に暗示をかけるように繰り返す。

私は…バルニエール伯爵令嬢のままでいてはいけない。

伯爵なんだ。

「まぁ、俺の前では、令嬢でいてもいいからな。」

ポンポンと頭を撫でられる。