「セイルともうします。姓はありません。よろしくお願いいたします。」
「それからしばらく、私はルキセントへ、行く。その間、セレナは留守を頼む。みなは、シェーンフィルダーのお屋敷へ、引っ越しておいてくれ。帰ってきたら、改めて挨拶に向かう。」
そして、使用人たちの最後の返事が聞こえた。
「はいっ。」
いつものような、元気な声だった。
「お嬢様、何かあったらシェーンフィルダー公爵様のお屋敷にいても駆けつけますわ。」
一人が言うと、皆が続く。
「お前たちにとっては、私はいつまでも、お嬢様なのだな。」
「私たちのご主人様は、お嬢様お一人です。」
ニコッと笑った。
「私にとって、お前たちは、家族だ。覚えておいてくれ。」
そう言って、私は部屋に戻る。
これでいいんだ。
きっと、初仕事は醜い。
私の心も醜くなる。
そうなる前に、
一人になりたいんだ。


