午前0時に口づけを


「シリル?!」

私はあわてて後ろを振り向く。

「先ほどの方は、どなたですか?バルニエール伯爵。」

「知り合いです。アルドゥアン家の次男。」

シリルは、私を幼馴染としてではなく、一人の伯爵として扱ってくれた。

「アルドゥアン子爵家ですか?確か、子爵自身も今日参加しているはずですよ。」

「そうですか。ごあいさつしなくては。」

シェーンフィルダー公爵家、バルニエール伯爵家、ブリエ伯爵家、アルドゥアン子爵家、そして、エモン侯爵家は別名、5大貴族とも言われている。

古くからの、王家直属の騎士であり、由緒正しき貴族のためである。

そのため、たとえ、侯爵でも5大貴族以外だと、子爵でさえ、力で抑えつけられない。

「子爵は、王太子殿下と話しておりました。ご案内しましょう。」

「ありがとうございます。」

私は、シリルの後についていく。

丁度、子爵と王太子殿下の話は終わったらしい。

「アルドゥアン子爵。」

「あぁ、バルニエール伯爵令嬢ではないですか。ぁ、今は伯爵でしたね。失礼。」

アルドゥアン伯爵は昔から、仲がいい。

普段なら私のことも、ジュリと呼ぶはずだが、公共の場ではああやって呼ぶ。

「お久しぶりです。子爵。」