「これは、王室の紋章じゃないか。」

「父上あてなのに、何でジュリエッタが持ってるんだ。」

私はにやりと笑って意地悪をする。

「ジュリって呼べない人に教えられないわ。」

いつも、ジュリでいいというのに呼んでくれない。

「で、何なんだ。ジュリエッタ。」

ぁ。無視された。

「シリル。女の子に無視はダメですよ。」

「ごきげんよう。シェーンフィルダー公爵夫人。」

もう一度ドレスの裾をつまみ、お辞儀する。

「固くならないでちょうだい。ジュリ。」

「はい。シャルロット伯母様。」

私は内心、うらやましく思う。

優しい両親がいるシリルが。

「シャロン、王室からだそうだ。」

「まぁ。誰がお誘いされてますの?」

「僕たち3人とバルニエール家だよ。」

バルニエール家・・・。

私の家。


「行かなきゃまずいよね。」

「当り前じゃないですか。あなた。」

「僕は、シャロンとジュリ、妹達に妃殿下以外踊りたくないんだよ。」

少し悲しげ位うつむく伯父様は、公爵というよりまるで少年のようだった。

お父様ではありえない。

「失礼します。バルニエール伯爵がいらしております。」

「あぁ、ココに通してくれるかい。カミーユ。」

「御意。」

お父様が来てしまったらしい。

きっと弟もついてきているだろう。

「お母様、」

「あら。アリー。起きたのね?」

可愛い妹のような感じのアリーことアリアンヌが私を見つけて目を細める。

「ジュリお姉さま。お久しぶりです。」

ニッコリ笑ったその顔は、天使そのもの。