「本日は父、アルフレッド・バルニエール、母、コリンヌ・バルニエール、弟、フレデリック・バルニエールのためにお越しいただきありがとうございました。」

私は、深くお辞儀をした。

これで葬儀は終了した。

この葬儀でいかに父が慕われていたかわかった。

領民は全員、来ていた。涙を流していた。

私は涙なんかでなかった。

「お嬢様、」

私ははっと背筋を伸ばす。

前にいたのは、領民。

「お悔やみ申し上げます。そして、お嬢様、わたくしたち領民は、お嬢様のためならば、地獄の底までついてゆく覚悟でございます。」

名前の知らない領民たちだっている。

でもここでは、私は領主なんだ・・・。

「ありがとう。でも。自分の体は大事にしてちょうだい。私のためを思って下さるなら。」

「御意。」

話しかけてくれるのは領民ばかりではない。

「お悔やみ申し上げます。レディ。」

「ごきげんよう、えっと。」

「西の、ブリエ領を治めております、アルセーヌ・ブリエと申します。」

ブリエ、

あぁ、そうだ。思い出した。

昔、お父様に連れて行っていただいたパーティで会ったんだ。

「申し訳ありません、少し、記憶が混乱してました。お久しぶりですね。ブリエ伯爵。」

「覚えていただいていたんですね。何かあったら頼ってください。私はいつでも美しいレディの味方ですから。」

私は、ニッコリもしなかった。できなかった。

なんとかそのお世辞を返せただけだった。

「お上手ですね。叔父が呼んでいるので失礼いたします。」

そう言い放ち、私は、オーレリアン叔父様のところへ向かった。