―――三年前―――
「シリル!」
「なんだ。ジュリエッタ。」
私、ジュリエッタ・バルニエールは、幼馴染兼婚約者の彼、
シリル・シェーンフィルダーに抱き着いた。
「それから、人前で抱き着くな。はしたない。」
体裁を気にする彼とお母様。
でも、私も、シリルもまだ子供なんだ。
だからいいじゃない。
「ジュリ。久しぶりだね?」
ドレスをちょこんとつまんで、
お辞儀をする。
「お久しぶりですわ。シェーンフィルダー公爵。」
「そんなに固くならなくてもいいよ。ジュリ。君は、僕の姪なんだから。」
従兄妹だとかそんなの関係ない。
家柄さえよければ、婚約はできる。
でも、私は一生、シリル以外に嫁ぐ気はない。
「ふふっ、じゃぁ、アベル伯父様。」
「なんだい。」
わたしと叔父様は顔を見合わせて、再び微笑む。
「ジュリエッタ、今日は何の用事だったんだ。」
シリルが面白くないのか、私たちの間に、入ってくる。
その光景があまりにも可愛いので、私は、少し笑ってしまう。
「招待状。届けに来たの。」
「あぁ、」
シリルといえば、社交界の花形。
ダンスもうまい、顔もいい、そして、公爵家の跡継ぎと言えば、
飛びつかない貴族はいない。
その対策として私がいるのだけど・・・。


