午前0時に口づけを


side シリル

ただ、かまをかけただけだった。

ジュリエッタは口では文句を言いながらも家族のことを一番に思っている。

家族だけじゃない。親しい人ならば、使用人でもだ。

だからこそ、僕は許嫁とか関係なく、

ジュリエッタのことが好きだったのかもしれない。

「シリル様、あとは、わたくしが。」

彼女の世話役のセレナが僕に話しかける。

「いや、構わない。好意だけ受け取っておこう。」

セレナはひかなかった。

「ですが、シリル様も、一睡もなさってないじゃないですか。」

彼女と僕も長い付き合い。

ばれてるのは当たり前か。

「ジュリエッタとの約束だ。」

そこでやっと彼女は引き下がった。

「無理はなさいませんよう。」

「分かっている。だがありがとう。」