なんなの、"外出中"の看板出してる給料泥棒のくせに。
と思いながら歩いていると、手が目に入った。
人の温かみは久しぶりで、自分の決心を揺らぎそうになった。
「…あんな…思い。」
したくないから、と教室に足を進めた。
片親である父とはすれ違って、いつも会えてない。
浮気(…まぁ離婚してるんだけど)するわするわの最低野郎。
お金だけ渡せば良いだろう、という考えが見え見えである。
「今日も…五万、か。」
お金の隣に置かれた紙には、"今日も帰れません。"の文字が並ぶ。
別に夜遊びにも飽きて、お金は貯まる一方。
高級過ぎる家も、私には居心地良く無かった。
ピンポン、と鳴るはずのないチャイム音が鳴り響く。
「…はい?」
「あ、あたしだよ、美紗!」
「ん、開ける。」
玄関に行き、扉を開けると急に抱き付いてきた。
「葵依ー!!…じつはぁ…」
と眈々と話す美沙。ざっくり言うと、"和磨が他の女を好きなんじゃないか"という相談だった。
「…見たの?」
「見たの。」
