数回しかあったことのない男と
ベットを共にし
遅い朝を迎える

善良そうな男
いそいそと朝食をはこんでくる姿に
数年後の家庭の姿さえ想像させる

やさしい男の車に送られ
沿道の桜並木を一人歩く
桜はほとんど散り
葉桜になりかけている

ふいに
初夏の風を感じ

絶対に思い出してはいけない残像を目の奥に感じる

学ランと
初夏の風に現れる白いシャツ
一番上のボタンをゆるめ
友達と笑いあう清潔なのどぼとけ

お願い
お願い

私を離して

心の中にある
あなたの姿を

だから
携帯をとりだし
いつものように告げるのだ

「さようなら。もう会わない。」

捨てきれないのは残像の彼なのかしつこい自分なのか
ただのエゴイストの癖に