私は鞄にスマホを入れて
高めのピンヒールを履く
電気を消して、いっそう寂しくなった
部屋に背を向け目を瞑る
パタンー…
『よぉー』
翡翠がドアを開けて待っている
『おはよ』
私は"ありがと"っと顔を見ずに呟き
革張りの座席に体を委ねる
『まりあ 聞いたぞー?』
『今月のヤバイらしいじゃん?』
そう言いながら
翡翠は楽しそうな悪魔の笑みをこぼし
バックミラーから視線を送ってくる
『どーした?』
『うちの看板がそんなんじゃ』
『この先、思いやられるぜ?』
翡翠なりに心配をしてくれてるんだね
ごめんね、なんて思いながら
翡翠の車の中は色んな香水の匂いが
混じりあっていて少し鼻が痛いな
って別のことを考えていた

