今年は、 今年こそは、渡したい。 このくすぶる気持ちとチョコレート。 中学生の時も、結局渡せなかった。 四年越しの、重たい重たい、 申し訳ないぐらい重たいこの気持ちを、 小さな小さなチョコレートに乗せて。 羽菜はゆっくりと机に戻り、化学部日誌に今日の実験を書き写す。 「羽菜。」 「はい。」 「カリウム10㎎を12㎎に書き換えて置いて。」 「はい。」 新田先輩は実験台から一回も目を離す事なく羽菜につげた。 古くて大きい理科室のストーブがしゅんしゅん言っている。