ちょっと緩んだ頬に気付かれないように、ポケットからイチゴ味のアメを出し、舐め始めた。
「名前何?」
私が聞くと、その男はカリッとアメを噛み砕きながら、答えた。
「―――神谷 玲央(カミヤ レオ)―――」
私もアメを噛み砕く。
「私は、桜ノ宮凛だよ。よろしくね」
玲央はその時、ほんのり笑顔になっていた。
時が止まってしまいそうになった。
いや、私の中の時が止まりそうになった。
「よろしくな」
そしてお互いに手を握った。
「よろしくね」
心がポカポカして、ドキドキした。
でも、頭の中にある人の笑顔が過った。
大丈夫……、玲央を好きにはならないから…
心が締め付けることは気が付かない振りをした。
「じゃ、私帰るね?」
川原にある、大きな石から立ち上がった。
「明日も…」
玲央が呟いた。
心臓が煩い…
少しだけ玲央に振り向いた。
「明日もここで待ってる」
私は振り返らず、無我夢中で走った。
胸が高鳴った。
真っ赤な顔を冷ますように走り続けた。
走ってる間も、玲央のことで頭がいっぱいだった。
でも、そのたびに私の中にある罪悪感が多くなっていった。

