次の日、噂になっていた。
『神谷玲央がモデルの華弥《かや》と付き合っている』
当の本人、神谷玲央はその噂を否定せずに肯定していた。
「玲央……」
気付けば、自分の口から名前が漏れた。
玲央は、私に気づいて微笑んでくれた。
出来ることなら、気付いてほしくなかった。
出来ることなら、噂を否定してほしかった。
私は、その場所から走って逃げた。
「凛……」
私の名前を呼ぶ声、期待していた人と違った。
「凌……」
心の奥で、玲央が来てくれるって思ってた。
泣き崩れる私を、凌は後ろから抱き締めてくれた。
「なぁ…凛……、玲央なんか諦めろよ……」
その言葉を聞いた瞬間、さらに激しく泣き崩れた。
「凌…苦しい……」
瞳から涙が零れ、鼻をすすりながら凌の方を少しだけ振り向いた。
「守るから……」
キツく優しく、凌は私を抱きしめた。
抱きしめた時の凌の顔はとても悲しみに満ちていた。

