「なぁ、未来の好きなタイプってどんな子だ?」
授業が終わりいつも通り翔と一緒に家に帰る途中、そんな質問をされた。
俺はこの手の質問が苦手だった。かなり大雑把な質問だと思う。どこまでの情報を提供すれば相手が納得するのか。そもそも好きなタイプを言葉で表す事自体間違いな気がしないでもない。
しかし、今まで何回も同じ質問をされてきた為、形式的な回答が出来上がっている。なので最近は直ぐに答えることが出来る。
「身長150cm台才色兼備で美目秀麗、容姿端麗、なおかつ料理ができる。黒ぶちメガネ、ミニスカニーソ、ツインテールが似合えばなお良し。」
「そんな奴いるかっ!」
「まぁ好きなタイプって事は理想のタイプみたいな物だからな。理想は高くても罰は当たらないし、そもそもいるかも知れないだろ。」
「よし。今からお前は"夢見がちの少年"という通り名を与えよう。」
何が"よし。"だよ。
「変な通り名を付けんな。そういうお前こそ好きなタイプはどんなだよ。」
「そんなに俺の好きなタイプを聞きたいんだな!教えてやろう」
「実はそんなに聞きたくない」
「そんなこと言わずに聞いてよ」
「いや、遠慮しときます」
「いいから聞け。聞いて下さい。お願いします」
「無理」
「黒髪ロングで姫カットが似合う、気の強い子だな。」
無理矢理答えやがった。しかも、もしかしてこいつ…
「Mかよ。」
「どっちかというとね」
Mだった!翔の新しい一面を知ってしまった! 決して知りたくはなかったが。
「それにしても彼女欲しいよな?」
「まぁそうだな」
適当に相づちを打つ。
「お前は既に同棲してるだろ!」
いきなり突っ込まれた。
「いや。双子だから。ただの家族だから」
翔は何かと、俺と俺の双子である未菜の関係を羨ましがる。確かに夏休みの宿題を分担出来たり、学校の情報を共有出来るのは便利だと思う。しかし、恋愛方面で羨ましがられる時は、それはないと思う。家族だから恋愛感情は生まれない。あいつも、姉がいるから分かるはずなのに。そういうと、姉と双子じゃ全然違う!と本気で反論される。
「まぁそれは冗談ということにしといて。それでも未来には凪ちゃんがいるもんな」
「凪ちゃんとはそんなじゃねーよ。お前の知ってる通り、ただの幼なじみだ」
「ただの幼なじみにしちゃ仲良すぎなんだよな」
確かに俺と未菜、凪は家が近所というのもあり、家族ぐるみの付き合いが多かったおかげで余計に仲が良い。小さい頃からよく三人で夜まで遊んでいた。
「そして俺も幼なじみのはずなんだけどな。お前らほど仲良くはねーんだよな。もしかして俺、嫌われてる!?」
「そうかもな」
「まじかよー!即答かよー!」
言いながら、両手で頭を抑え天を仰ぐ格好をしていた。
「でもマジで凪ちゃんはかわいいと思うぞ。このままだと他の奴にとられるかもな」
「…あー。それはなんか嫌だな」
「それならさっさと告っちまえよ!」
「そんな簡単な事じゃないだろ」
「簡単だろ!好きです。付き合って下さいって言うだけなんだから」
「そうじゃなくてだな…」
少し言うのを躊躇ってから
「今までの関係が崩れるかも知れないだろ」
「お前は女子か!」
案の定突っ込まれた。
「このままだと、きっと後悔するぞ。じゃあまた明日な。未来」
「あぁ。また明日な」
いつもの十字路に差し掛かりいつも通りに別れ、お互いの帰路についた。