「じゃ… また明日学校でね?」
「うん。今日はありがとう」
「こちらこそ!無理言ってごめんね?」
「全然!楽しかったよ」
「なら良かった!」
「柚、気お付けて帰れよ?」
「うん!俊もありがとう」
「お!じゃまた明日な!」
「うん!じゃーね!」
「ばいばーい!」
「ばいばい」
優雨達に背を向けて来た道を歩きながら
ふと、思い出すと
何故か千隼がいなかった
トイレでも行ってたのかな?
なんだか少し淋しい
隣にいた時は
すごく苦しかったのに
いざ、いなくなったら
すごく淋しい気持ちになる
「何で…?」
あなたは一体何なの?
「訳わかんない…」
苦し紛れに出た独り言
今までに感じたことのない気持ちに
浸っていると
「バイトじゃないの?」
とくん
甘くて優しい声が後ろから聞こえてきて
「柚葵」
大きなあたたかい手が私の腕を掴んで
私をぐっと引っ張った
そのまま顔をあげると
「千隼…」
少し険しい顔をしたあなたがいて
でも、瞳はやっぱり優しくて
「柚葵」
もう1度私を見て名前を言ってくれた
ふっ、と息を吐いた後
私をまっすぐ見つめてきた
たったそれだけのことなのに
どき、ってなった
「ったく、何でバイトだなんて嘘ついたんだよ」
「嘘…?」
「そーだよ!お前、俺がいる時には
1回も携帯開いてねーじゃん」
「あ」
そういえば確かに千隼の前では1度も
携帯を開いてないや…
「やっぱり嘘だったんだ」
「うん…」
「ったく」
呆れた様な声が聞こえてきて
なんだかすごく悲しくて
また、胸がギュってなって
「ごめんね」
身体中から暑い何かが湧いてきて
「ごめんなさい」
気付けば私の瞳からたくさんの涙が
溢れでてきて
私の頬を濡らしていく
