「な、柚葵」
「ん?なに?」
「お前本当に彼氏いねーの?」
「は?」
「だーかーらー、彼氏いねーのか?
って聞いてんだよ!」
「いないけど?なんで?」
「いや、ちょっと聞いただけ」
「なによ!何かあるんでしょ?」
「いや、噂が本当なのか確かめたかっただけだから」
「噂って?」
「学校1の美人には彼氏ができたことないって言う噂」
「なにそれ。聞いたことないし。第一、学校1の美人は私のわけないでしょ。優雨ならまだしも私って… おかしすぎだから」
「お前本当に自覚ないんだな」
「何が?」
「自分が可愛いってこと」
「え?」
「だから柚葵は優雨よりずっと可愛いよ。恥ずかしいから何回も言わすなよ」
紅くなった頬を隠しながらそんなことをさらっと言った千隼にすごく…
きゅんってした
可愛いね。とか
綺麗だね。とか
そんなお世辞は嫌と言うほど聞いてきた
だから、どの言葉にも
作り笑いで適当に誤魔化してきた
でも、千隼には
お世辞で可愛いと言われても
舞い上がってしまうほど
嬉しい自分がいた
「あ、ありがとう。お世辞でも嬉しい」
嬉しいのに
すごくすごく嬉しいのに
それに素直に喜べない私は
本当に可愛いくない
