彼女は真剣に先生の話を聴いてる。



でも何故かノートは白紙のままだった。



目が悪くて見えないとか?



ここは一番後ろの席で、オマケに窓側だから、光の加減で黒板が見えにくい。



でも机の上にシャーペンが転がってるんだから、書く気はあったんだろう。



「ひょっとして左利き?」



もしかしてと思った俺は、小さな声で彼女に尋ねた。



少し驚いたような顔をしたけど、彼女はコクりと頷く。



「なんかあれば遠慮しないでに言っていいよ。じゃなきゃ樹月さんが困るでしょ?」



俺の言葉に彼女はニコリとして



「ありがとう」



って言ったんだ。



だからそれ反則だって!



俺は心の中で叫んだ。



時計を見れば、授業時間が半分を過ぎたことに気付く。



この時間に俺が起きてるなんて珍しいことだ。



明日の天気は雨で決定だな。



まぁ起きてる理由はといえば、彼女がノートを取りながらも、俺の話し相手になってくれてるからかな。



もちろん小声だけど、席の近い奴には聞こえてたかも。