沈黙を破ったのは凪柚だった。



「私、お母さんとお父さんの子供に生まれてきてよかったよ?たくさんの友達も出来たし、それから……蒼生くんに出会えたことが、すごく嬉しかったの。だってね、私が此処にいたって証に、蒼生くんが泣いてくれるでしょ?」



そう言って凪柚は笑う。



凪柚が思い出になるなんて、絶対に嫌だ。



人魚姫は、どんなに苦しい思いをしてたんだろう……。



「また、そんな顔する」



「だって、凪柚がそんな風に笑うから……」



「じゃあ、蒼生くんは私が泣いてた方がいいの?」



違う。



凪柚が泣いてるのはもっと嫌だ。



あ……。



全部、俺の為……?



凪柚を見ると、俺の考えてることがわかるのか笑顔を見せた。



それはいつもの凪柚で、その顔につられて俺の顔も緩む。



「蒼生くん、お願い、してもいいかな……?」



凪柚は眉毛を下げながら聞いてくる。



「お願い?」



「うん。夏休みにね、一緒に行きたい場所があるの。ふふふ、デートって言うのかな」