今日だって学校で会ったのに、久しぶりに会ったように錯覚してしまう。



“ああ、凪柚だ”って。



“やっと会えた”って、思ってしまう。



「人魚姫じゃない。凪柚は、凪柚だよな?」



俺の問いに、凪柚が小さく頷いた。



まだ考えたくない。



凪柚がいなくなってしまうなんて。



まだ先のことであって欲しい。



「凪柚のお母さんが紅茶淹れてくれるって。一緒に行こう?」



俺たちは立ち上がって階段に向かった。



階段を下りようとした時、後ろからシャツを引っ張られて、振り向くと凪柚が笑ってた。



「あのね、私の誕生日は8月6日だよ」



覚悟を決めたかのような、凪柚の笑顔。



まだ、考えたくなかった。



凪柚と過ごせる時間が、



あと三週間もないなんて---…。