凪柚に初めて会った海沿いの道。



緩いその坂を駆け上がって、高台から青い屋根が顔を覗かせる家を目指す。



洋館、とまではいかないけど、大きな建物が凪柚の家だ。



前に一緒に帰った時に凪柚が教えてくれた。



教えてもらっててよかったって思う。



海沿いの道から道路を渡って、細い道に入る。



凪柚の家へと続くその道を、俺は息を切らしながら走った。



もう少し……。



生い茂る木々のお陰で、暑さは少しだけ和らいだ。



小道を抜けると白い壁が見えた。



凪柚の家だ。



玄関の手前に潤哉が立っているのが見える。



「あ、蒼生!思ったより早かったな」



「はぁ……はぁ…。そりゃ、そうだろ……。走るの嫌いな俺が、走ってきたんだから……」



息を切らしながら話す俺を見て潤哉は笑う。



「よし、じゃあ行くか」



「ああ」



潤哉の言葉に頷いて玄関まで行くと、俺はゆっくりとインターホンを押した。