家に帰ると珍しく誰もいなくて、俺は階段を上がって自分の部屋へと向かった。



後ろからついて来たピーチは、ドアを開けると俺より先に中に入っていく。



倒れ込むようにベッドに寝っ転がると、止まったはずの涙が一つ、また一つと溢れ出してくる。



苦しい…。



凪柚を想えば想うほど、押し潰されてしまうような、そんな気持ちになる。



凪柚を好きでいちゃいけない。



頭ではわかってるのに、胸が締めつけられるんだ。



違うって、心が叫ぶんだ。



「凪柚……」



口にすると、やっぱり好きだなって、簡単に思ってしまう。



凪柚がいなくなるなんて、嫌だ……。



なんで魔女は凪柚に……人魚姫に呪いをかけたんだ…。



なんで凪柚だけが悲しい思いをしなければいけないんだ。



なんで……なんで、凪柚が……。



そう思ったら、余計に苦しくなった。



この恋が叶わなくてもいい。



だから凪柚だけは--……。



……--。