出入り口に立ったまま、俺たちに一礼して中に入ってくる。



「こんにちは」



「あ、こんにちは」



潤哉に声を掛けられ、彼女は少し驚いたように返した。



「あの…三鷹先輩に用事があって来ました。少しだけ、お話しいいですか?」



彼女の言葉に俺は潤哉を見た。



「なんかあったら電話しろよ」



潤哉はそう言うと、カバンを持って席を立つ。



そんな潤哉に甲斐さんは頭を下げて見送っていた。



「で、俺に用事って?」



彼女は俺に向き直って



「失礼します」



と、潤哉の座っていた席に腰掛けた。



「先輩に言っておかなきゃいけないと思って。



……記憶を持つ者について」



「記憶を、持つ者…?」



甲斐さんの言っている意味がわからなくて、俺は聞き返した。



「記憶を持っている者、つまり前世の記憶がある人のことです。先輩も心当たりがあるんじゃないですか?」



その言葉にドキッとした。