授業終了の鐘が鳴る。



でも俺は凪柚を離せずにいた。



このまま離したら、凪柚がどっかに行ってしまうんじゃないかって思ったんだ。



さっきよりも腕に力が入る。



「そう…き、くん…?」



凪柚の小さな声が聞こえて、俺は少しだけ体を離した。



そして凪柚の両肩を掴みながら、ジッと見つめる。



「凪柚、俺…」



まだ肝心なことを言ってないのに、凪柚は視線を逸らしてしまった。



「凪柚きいて?俺、初めて会ったときから凪柚のこと…」



俺が全部言い終わる前に、凪柚は両手で俺の口を塞いで



「言わないで!!」



って言った。



凪柚の悲鳴にも似たその声に、俺は動けなかった。



「お願い…言わないで…」



そう言って俺の口を押さえる凪柚の手は、カタカタと震えてる。



俺はそっとその手を握って、ぎゅっと凪柚を抱きしめた。



濡れた髪が、俺の頬にあたる。



次第に溢れ出す凪柚の涙は、俺の服を濡らした。



「ごめんなさい、蒼生くん…ごめんなさい…ごめんね…」



凪柚は何度も謝った。



声も、手も、身体も震えてるのに。



涙は止まる様子もなく溢れ続ける。