「でも、凪柚は嘘つくような子じゃないって知ってる。だから信じるよ、凪柚のこと」



凪柚は泣きそうな顔で俺を見てた。



「なんでそんな顔すんの」



「だって、蒼生くんが…、信じてくれるって言うから……」



そう言いながら、凪柚は結局泣いてしまった。



「泣くなって」



凪柚の長い髪を撫でて、そっと引き寄せる。



プールの匂いと、シャンプーの香りがほんのりとした。



小さい凪柚は、俺の腕の中にスッポリと収まってる。



まるで猫みたいだ。



可愛くて、心地よくて、ずっとこうしていたいって思ってしまう。



凪柚が好きだ。



すごく、すごく…。



「蒼生くん、私ね、もう一つ言わなきゃいけないことがあるの」



俺の腕の中で、凪柚は言った。



少しだけ嫌な予感がする。



「おばあ様が人魚なら、私にも人魚の血が流れてる。それだけならよかった。でも…」



凪柚は言葉を飲み込んで下を向く。



それから、俺のTシャツを両手で握りしめた。



「凪柚?」



声をかけただけでビクリと動く凪柚の体。



その小さな体が震えてた。