相変わらず揺れているカーテンの向こう側からは、生徒たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。



このまま凪柚と二人きりでここにいたら、本当に“好き”を口にしてしまいそうだ。



唇を噛みしめて、保健室を出ようと椅子から立ち上がると、凪柚が俺の右手を細く小さな両手で掴む。



「やっぱり信じられない?」



凪柚は俺の顔を覗き込みながら聞く。



俺の中で何かが聞こえた気がした。



気持ちを…“好き”を言ってしまえと。



「蒼生くん…?」



凪柚は呟くように俺の名前を呼ぶ。



繋がれた手が、徐々に熱くなってくのがわかった。



もうこれ以上我慢することなんて出来ない…。



窓の外から強い風が吹いて、カーテンが大きく揺れた。



凪柚の長い髪も小さく揺れる。



「凪柚…」



俺は椅子に座り直して、凪柚を見た。



手は相変わらず繋がれたまま。



深く呼吸し、ジッと見つめる。



「凪柚の言ってること、聞いてすごい驚いたよ。そんなはずない、人魚なんていないって」



俺の言葉に、凪柚の顔はどんどん暗くなっていく。