なんで中学から知っているかといえば、この人が潤哉のお姉さんだから。



潤哉の家に遊びに行けばだいたいいる。



四年前、瑞穂さんの旦那さんが亡くなってから、それまで住んでいたアパートを引き払って実家に戻ったそうだ。



その頃にくらべると今の瑞穂さんは別人みたいに明るい。



名字が“柿部”のままなのは、結婚してからも瑞穂さんが名字をかえなかったからなんだって。



凪柚はそんな俺たちのやり取りをただポカーンと見ていた。



「ところでどうして溺れかけたの?ジャージもびっしょり濡れてたし…」



瑞穂さん…じゃなくて先生が不思議そうな顔をする。



「無理矢理プールに入れさせられたんですよ」



「泳げないって言ったけど、先生きいてくれなくて…」



淡々と俺が答えたあとで、凪柚が小さく言った。



「そういうことね…。じゃあ早めに他の先生方にも話しておかなくちゃ」



そう言うと先生は席を立った。



白衣を脱いで座っていた椅子の背凭れに掛けてる。



「ちょっと職員室に行ってくるわ。ゆっくり休んでていいわよ」



先生はゆっくり戸を閉めて職員室へ行ってしまった。