そして、俺は悪くないと言ったような顔で、



「俺が保健室に連れていこう」



と言った。



その言葉に俺の我慢も限界だった。



「結構です。俺がつれていきますから、凪柚に触んないでください」



言いながら先生を睨み付ける。



先生はそれ以上なにも言ってこなかった。



貸していた俺の黒いジャージが水を吸って凪柚の体にまとわりついてる。



俺はまだ震えてる凪柚の肩のあたりと、太ももの裏に腕をやって抱き上げた。



人生初のお姫さまだっこ。



「うちらも行く!」



凪柚の友達が二人寄ってきて言う。



「ありがとう」



俺は二人にお礼を言って歩き始めた。



「凪柚…大丈夫か?」



俺がきくと、ピクンと動く。



プールの水でびっしょりと濡れた俺の緑色のTシャツを、がっちりと握ったまま凪柚は頷いた。



あの先生だけはゆるさない。



「三鷹くん!気持ちはわかるけど、顔がすっごい歪んでる!!」



「凪柚ちゃんがこわがるよ!」



二人に言われて我にかえった。



でもよく殴りかからずにすんだな、俺。



そんなことをひっそりと思った。