一度大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせる。



そして俺はゆっくり、



「気持ちは嬉しいけど…ごめん。甲斐さんとは付き合えない」



と彼女に言った。



彼女は頷いて笑顔を見せる。



スカートを握りしめながら…。



彼女が先に行ってからじゃないと、ここから動いちゃいけない気がした。



でも彼女はそこから動こうとしない。



向き合ったまま、俺たちの間に沈黙が続く。



「あの…!」



口を開いたのは彼女だった。



俺は顔を上げて彼女を見る。



「一つだけ聞いていいですか…?」



彼女の声は少しだけ震えてる。



「なに?」



俺も自然に言えたかはわからない。



今の俺は上手く喋れる自信なんてない。



誰かをフルのって、何度経験しても辛いのな…。



「先輩に好きな人がいるってきいたことあります。それって、転校してきたばかりの髪の長い金髪の人ですか?」



甲斐さんは俺を見て言う。



相変わらずスカートを握りしめたままだ。



ここでその質問の答えを言ってもいいのか…?



でも、気持ちをぶつけてくれたんだから、俺も応えなきゃな。