約束の日の朝。



時刻は9時半を回ってる。



待ち合わせの時間まであと30分あるが、余裕を持って出掛けようと、玄関のドアを開けて空を見た。



空は今にも降りだしそうな色をしてる。



俺は傘を片手に家を出た。



住宅街のなだらかな坂道を上ったところにある喫茶店。



歩いて15分くらいで着くこの場所は、俺たちのたまり場になってる。



晴れた日にはここから海のズーッと向こう側に島が見えるのだが、今日はあいにくの曇り空でそれを見ることは出来ない。



今日見えるのは暗く波打つ海。



そして静かに吹く風の中で、カモメの鳴き声が聞こえた。



お店のドアを手前に引いて開けると、カランカランと鈴の音がする。



「いらっしゃいませー!」



店員さんは明るく言って、いつもの席まで連れていってくれた。



昼前のせいか、いつもより客が少い。



店内には、新聞を読んでいるオジサン、眼鏡を拭きながらため息を吐く30代くらいの女の人がいた。



右手で頬杖をついて、窓の向こうに見える海をボーッと眺める。



「どうぞ」