「あの、これ…読んでください…!」
真っ赤な顔を隠すように、彼女は頭を下げて、両手でピンク色の封筒を俺に差し出す。
こういう経験が初めてなわけじゃない。
それこそ高校に入ってから何回かあった。
でも何度あっても、慣れるものでもない。
俺自身は実はすごく苦手だ。
まだ完全に乾ききっていない髪を意味もなくクシャクシャとする。
普通なら“ありがとう”と、にこやかに返せばいいのだろうけど、
俺にはそれが出来なくて、
「どーも」
なんて素っ気なく言って封筒を受け取った。
そのあと、赤いままの顔を一度上げるも、彼女は再びペコリとお辞儀して、廊下を行ってしまう。
彼女の向かった方からは、凪柚たちが歩いて来ているのが見えた。
とりあえず俺は受け取った封筒を、ズボンのポケットに入れる。
ちょうど彼女が凪柚の横を通り過ぎた時だろうか。
すごい勢いで、凪柚が振り返った。
「凪柚ちゃん?」
一緒にいた友達もビックリしたのか、声を掛けてるけど反応しない様子。