夕陽と海が交わる海沿いの道はオレンジに染まる。



俺はヴァイオリンケース片手にその道を歩いてた。



「明日学校かぁ…」



ヴァイオリン教室の帰りはいつも憂鬱だ。



月曜日になんてならなければいいと、


心の中で何度思ったか…。



高3になってからは


特にそう思うようになったんだ。



今日は七夕だ。



別にどうしても叶えたい願いなんてないけどさ、



なんて思いながら歩く足を止めて、ボーッと空を眺める。



時折吹く風が心地よい。



小さくため息を吐いて、また、真っ直ぐ前を見た。



いつもの道には数人の人が歩いていたが、



俺の目に見えたのは、50メートルくらい向こう側で海を眺めてる女の人だった。



腰の辺りまで伸びた髪は海風が吹く度に靡く。



その透き通るような髪が夕陽色に染まって眩しかった。



俺は速度を変えずに、彼女がいる方へと歩いていく。



着ているのが、白のワンピースだとわかってすぐに、



彼女もこっちに向かって歩き出した。