動かすのはマズイか。
救急車を呼ぶか。
胸のポケットから携帯電話を取りだす。
ボタンを押し掛けて、
「お?」
微かな声を上げて少女が身動ぎしたのが見えた。
「気がついたか」
「……わたし…」
起き上がろうとし、
顔を上げる少女のこめかみから頬に血が滴った。
「……血…?」
「あんた、車に跳ねられたんだよ」
「……くるま?」
「ああ、あんたを跳ねた車は怖くなって逃げ出した。ひき逃げだな」
「………」
指に付いた血を少女がじっと見ている。
「おい?」
声を掛けても何も答えない。
「おい、大丈夫か?」
訪ねても素知らぬフリでふらりと少女が立ち上がる。
まともに歩ける状態じゃない。
「おい、あんた!」
「……いかなく、ちゃ」
「おい!どこへだよ!!」
捩れた足で無理だ!
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