「ちっ、」
「舌打ちすんな。」
「今日は厄日だぜ。肋を折ったかと思えば訳わかんねぇ女拾うしよ」
絶対に厄日に違いねえよ。
訳わかんねぇ女なんてあのまま見捨てときゃよかった。
ボソッ
呟くとびくっと少女が震えた。
「仁、」
「なんだよ」
「もしも、おまえが記憶を失って無一文で放り出され頼るしかないなら誰を頼る?」
「………」
「警察か?」
「………」
「違うだろう?」
「………」
確かにすがりたいものは警察じゃねえ。
だが、
「面倒を見てやれ」
「若、」
「仁、この子の記憶が戻るまでだ」
「成田……」
目に涙を溜めながら唇を噛む少女がじっと俺を見ていた。
それを見て諦めて大きく息をつく。
「仕方ねえな。記憶が戻るまでだぞ」
ばあ。
一瞬で顔を明るくした少女が頷いた。
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