若は面白そうに口の端を上げてニヤリ笑った。
「おまえになついたんだろ。記憶が戻るまで面倒みたらいいじゃねえか」
「ばか、やろ。そんなことできるか!警察に保護してもらえ!」
若は何かを考えたらしく、何を言っても通じない。
「仁が拾ってきたんだろ?最後まで面倒みな」
なあ、お嬢さん。
電話機を抱き締めしゃがんだ少女の頭をよしよしと撫でた。
「バカやろ。俺は男だぞ。女を屋敷に連れて帰れるか!」
「俺が許すってんだから何も問題ないだろ?」
若が立ち上がると一瞬だけ鋭く冷ややかな視線を投げた。
「仁、これは命令だ」
「、」
若が下した命令は絶対だ。
屋敷に連れて帰って記憶が戻るまで面倒を見なければならねぇ。
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