「記憶喪失?誰がだ?」
「だからよ、この女がだよ」
若が電話を抱き締めて離さない少女をマジマジとみた。
「名前は?」
「……わか、ら、ない」
「女、だよな?」
「おい、男にはどう見ても見えねえだろが」
突っ込んでやった。
「俺はとにかく巻き込まれるのはゴメンだ!」
「だから、おまえが拾ってきたんじゃねぇかよ。責任はおまえが取れ」
成田が押し付けても、俺にはどうもできねぇ。
連れて帰るわけにはいかねえ。
若が少女をじっと見つめ、少女も泣き顔のまま唇を噛んで見返した。
「俺が怖くないのか?」
コクン。
少女が頷くと若がとんでもねえことを言いやがった。
「仁、おまえが面倒見ろ」
「は?」
絶句した。
「おまえしか頼るとこがないんだろ。面倒見てやったらどうだ?」



