記憶喪失なんて俺の手には負えねえ。
成田、第一、おまえ根本的に間違ってるぞ。俺は男だ。
「成田、てめえが預かりやがれ」
「―――仁、龍神会の『黒龍』の雑魚、5人組とやりあってケガしたんだってな。あ???」
診察室に遠慮もなしに入ってきた若が、俺と電話を抱き締め泣いている少女を見て顔をしかめた。
「……邪魔したな」
「若!」
勘違いも甚だ。
「待て、奏」
「いいとこに来た」
グイ。
思わず若の袖を引いた。
「拾ったんだ」
「あ??」
「帰れねえんだと。名前も思い出せねえんだっつうんだ」
「あ??」
「車に跳ねられた拍子に記憶飛ばしたらしいんだ」
「………」
「だからよ、」
「仁に懐いたようだからよ、仁に面倒見ろって言ってんだ」
成田がお手上げして奏に話を振った。
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