黄金時間が過ぎるまで〜もう一つの番外編

男はそう言うと席を立ち、その場を立ち去った…

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!女性を一人残して置いて行くつもり?!失礼だわ!!それに…デザートぐらい食べて行きなさいよ…」

私は不覚にも、あわてて男を呼び止めてしまった…

足を止めた男は、背を向けたまま少し考えた後…ゆっくりふり向くと私の顔を見て、ニヤリと笑ったではないか…

「…?!?」

自分の顔に、ものすごい勢いで血が上るのを感じた。

この男は、わざと立ち去るフリをしただけだったのだ…

何てヤツなの?!
私の反応を見て楽しむなんて、百万年早いわよ!!

「…それでは…綾子さんのお許しがもらえたので、今日はのんびりさせて頂きますね…」

優雅に席に着く男を見ながら、私は自分に腹を立てていた…

こんな失礼な…年下男に動揺するなんて、バカじゃないの私?!

静まらない動悸をいまいましく思いながら私は、満足そうに笑っている男の顔を睨み付けて、自分に言い聞かせた…

きっと…この男の本当に笑った顔を見たのが、初めてだったせいよ…