黄金時間が過ぎるまで〜もう一つの番外編

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「お会いするのは、これが最後になるかもしれません…」

いつものように、仕事の話をしながら食事をしていると、男はおもむろにそう言った。

「…そう…」

デザートを待っていたテーブルにコーヒーが先に運ばれ、辺りにいい香りが漂う…

「本当に長い間お待たせして、申し訳ありませんでした…この間(ついに)榊さんが落ちてくれたので…ようやくめどが立ちました」

「…頑固な人だったようね、榊さんは…」

「ええ…」

男は、完璧なビジネス用の笑顔を浮かべた…

一体、何年の月日が経ったのかしら…六…七年?もうそんなになるかしらね…

奇跡の復活を遂げた『鳴海』に父は、もう早く結婚しろしろ、うるさくてかなわない…そんな頃に、転機は訪れたのだった…

「…綾子さんには、本当に感謝しています…なるべく早く決着を付ける予定で、急ピッチで仕事に当たっています…」

「…そうね、出来るだけ早くしてもらいたいものだわ…私が行き遅れたりしたら、あなたのせいだからね…」

「本当にすみません…では、今から社に戻って仕事の続きをしたいと思いますので、私はこれで失礼します…」