黄金時間が過ぎるまで〜もう一つの番外編

…たぶん…この学校にいる霊の中で、一番厄介な人だろう…

…あぁ、こんな事になるなら、ちゃんと除霊の仕方をマスターしておくんだったな…はぁ…

「…飛び降りるつもりですか?里美さんには関係ないでしょう?…僕が代わりますから…」

里美さんに入っている男は、満足げに顔をゆがめると、大声を出して笑った…

「あっはっはっ!いいだろう…ただし俺は、お前に入る事が出来ない…自分で飛び降りてもらおうか?」

「…分かりました…」

僕が手すりの所まで歩いて行くと、里美さんの体がグラリと崩れ落ちた。

「大丈夫?!里美さん?」

気を失って、ぐってりとしていたが、霊障の心配はなさそうだ…

「さあ…早くしろよ、お兄ちゃん?」

男の霊が手すりの向こう側で宙に浮き、僕が行くのを笑いながら待っている…

自分は慎重に足を手すりにかけ…

手すりの向こう側に、かろうじてある足場に両足を乗せて、体の向きを変えると、下を見下ろした…