一年が過ぎ、暖かい日差しが街全体を包んでいた日のことでした。

保高さんは毎朝、一定の時間帯に部屋を出るのに、その日に限っては時間が早く、小さく聞こえる足音も様子が違っていました。

どこかへ出かけるにしては…?

私の考えはあながち間違ってはいないようで、その数時間後に帰ったところを捕まえて聞き出しました。


「彼女にコレがな…」

保高さんはお腹が膨らんだような動きをして部屋へと入っていきました。

保高さんの彼女に妊娠が判り、その確信を得るために検査を受けたのです。

その背中の哀愁は今でも覚えています。