あきらめて森へ向かうことにした。
 しかし何も起こらない。
「もう帰れないのかな」
 クーちゃんは小さな石を渡してきた。きれいな石。
「あげるから元気を出して」
 この子なりに私を慰めてくれている?
「ありがとう。クーちゃん」
「どういたしまして」
 渡したあと、石をしばらく眺めていると、クーちゃんがいないことに気づき、かなり焦った。
「クーちゃん?どこ?クー!」
 叫んだ瞬間、強い衝撃があった。目の前にいるのはクーちゃんだった。
 私の全身が光に包まれていた。
「美海、好きだよ。本当はもっと一緒にいたいけど、ばいばいするの!」
 クーちゃんは泣きそうな顔で私を見ていた。
「私も好きだよ。忘れないからね」
 光が強くなり、クーちゃんが見えなくなった。
「美海、起きろ!」
「ん・・・・・・勇希?」
 目の前には大好きな彼がいた。
「急に倒れるからびっくりした。大丈夫か?」
 ゆっくりと頷いた。左右を見ても、クーちゃんの姿はなかった。
「あの、クーちゃんは?」
「まだ寝ぼけてやがる。もう少し休め。いいな?」
 再度頷いたあと、ポケットに違和感を覚え、手を入れると、クーちゃんからもらった石が入っていた。
 夢じゃない。あれは現実だった。
「あのね、面白い話があるから聞いてくれる?」
「いいぜ」
 それはほんの短い時間に起こった小さなくまさんの優しい物語。