到頭如月翔平が登校すると言われる日。
私は本当に彼が来るのか
半信半疑でもあった。
健太郎と紗羅は、私を心配する表情で
見つめていた。
「大丈夫、俺が守るから」
健太郎は自信たっぷりに言ってくれた。
その言葉を貰って、少しだけ
不安が和らいだ気がした。
だけどその朝の時間には
如月翔平は登校してこなかった。

2時間目。突然ゆっくりと
扉が開く音がする。
誰か保健室にでも行っていたのだろうか。
「…………」
先生の顔色が無言で変わる。
少し嬉しいような、困っているような、
そんな表情で入り口を見つめていた。
やがて扉を開けた人物は、
扉をゆっくり閉めて先生に歩み寄る。
「先生、お久しぶりです。
皆さんも初めまして。久しぶりの人は
久しぶり。俺は……
長い間このクラスに居なかった如月翔平です」
不良という噂があったのに、
全然不良っぽい容姿ではなかった。
教室がざわめきだす。
やがて、1人のクラスで元気な少年が
如月翔平に話しかけた。
「不良って噂を聞いたんだけど!」
その瞬間、教室の賑やかさが
一瞬にして消えていった。
如月翔平の表情が突然変わる。
「俺は生まれ変わったつもりだ。
皆と仲良くしたいと思ってる。
喧嘩は日常茶飯事だったけど、
もう絶対に人を傷つける事はしない。
……先生、俺の席はどこですか。
あと、正しい服装がわからないので
後で俺の服装、指導してください」
それを語る如月翔平の表情は、
真剣そのものだった。
それでもやっぱり、
彼が私の隣に腰掛けると、
手が少し震えてしまう。
如月翔平の視線を感じる。
(ああ、今彼を傷つけてる。
下手したら怒ってるかも……)
でも恐怖は止まってくれなかった。
如月翔平が筆箱とノートを出すと、
先生はそれを合図に授業の続きを始めた。