今日の健太郎はスランプそのものだった。
「わりぃ、希美。筆記用具貸して。
忘れてしまった……」
申し訳なさそうに言う健太郎に
軽く笑顔を向け、自分の筆箱に触れた。
「あ、それならうちが貸したげるよ」
けれど、私が出す前に、
紗羅が健太郎に筆記用具を差し出した。
心なしか、少しだけ健太郎の
表情が曇った気がした。
「ぁ……ありがとう、文月」
私も、それならいいかと微笑んで、
筆箱に触れていた手を離した。
隣の誰もいない席も
あまり気にならなくなった頃。
風の噂で聞いた。
如月翔平が戻ってくると。
正直恐怖が自分を襲っていた。
健太郎は、見るからに怖がっている私を
大丈夫、俺が守るからと
励ましてくれたけれど、
やっぱり怖くて背筋が伸びたままだ。
一週間後、如月翔平が登校するそうだ。
睨まれないか、殴られないか、
心の底から恐れていた。