その日は申し訳ないと思いつつも
見知らぬ少年の優しさに感謝しながら
家に帰った。
ところでこの傘を、
どうやって少年に返そうか。
とりあえず、家に置いておく事にした。

翌日。
朝からどしゃ降りの雨だった。
靴下まで濡れて気持ちが悪い。
「紗羅ぁ、靴下気持ち悪いよー」
私はしかめ面でそう言った。
紗羅は爽やかに笑った。
「私も」
2人で笑い合う。
「あーっ!はぁ……はぁっ……」
そんな2人の中に、
割って入ってくるかのように
健太郎は走ってきた。
そしてその直後にチャイムが鳴った。
私と紗羅は、そんな様子の健太郎を見て、
くすくすと笑っていた。
未だに息を切らしている健太郎の額には、
一筋の汗が滴り落ちていた。
少し男っぽいな、と思ってドキッとした。
ダメだ、ダメだ。
生涯親友でいるんだから恋しちゃダメ。