ホワイトデー。
少しだけ期待していたけれど、
放課後になっても何も起きなかった。
「はぁ……」
掃除時間に溜め息をついた。
そんな私の顔を健太郎が覗き込む。
「どうしたんだよ、望美。
最近元気ないぞ?俺で良かったら
相談に乗るよ。無理すんな」
「うん……ありがとう」

いつも通りに先生が
さよならの挨拶をして。
健太郎は家の用事で先に帰り、
紗羅は職員室に呼ばれた。
ぽたぽたと雨が降り始める。
「あぁー…また雨だ。
どうして1人の時に限って
雨が降るのかなぁ。……はぁ」
また溜め息をついて、
ゆっくり歩き始める。
肩や頭に冷たいものが辺り続ける。
髪も服も濡れて、何もかも台無しだ。
バッグの中身もきっとずぶ濡れだ。
「はぁ……」
そうしてまた溜め息をついた時。
私の体に当たる感覚がなくなった。
それなのにまだ雨の音が聞こえる。
(あの人が傘をあの時みたいに
してくれてるのかな……)
ああ、ダメだ。こんな事考えてちゃ。
きっとまた麻痺しているんだ。
でもそれは段々確信に変わる。
隣に人の気配を感じたからだ。
(もしかして……いや、でも
そんな事、あるはずない)
そう思って、気配を感じた方に
目をやると。
「……」
こちらを見ながら
翔平君が隣を歩いていた。
「何やってんだ。
こんなに濡れて……。
何を考えてるんだ?」
翔平君の事だよ、なんて
言えるはずがなかった。