朝。
あの人の事を考えて、
一生懸命作ったチョコレート、
その余りで作った
友チョコをバッグに詰める。
(受け取ってくれるかな……)
家の扉を開けると、空には
目映いばかりの晴天が広がっていた。
とても気分がいい。
素敵な1日が過ごせる事を期待して、
右足を前に踏み出した。

……

ほとんどのチョコを友達に渡したのに、
あの人にはまだ渡せないまま……。
隣の席なのに、変だ。
「なぁ、望美」
私の周りから人がいなくなった頃。
囁くような声で健太郎が私を呼んだ。
「覚えてる?去年の夏の日の事」
勿論覚えている。今まで健太郎に
返事を返してこなかったのは、
親友以上の関係になるのが
怖くて仕方がなかったから。
でも、今なら言える気がする。
「もう1回告る。望美が好きだ」
真剣な瞳。私も目を逸らさずに、
意を決した。
「私、健太郎の事を男として見たくない。
ごめんね。親友以上の関係になるのが
怖いんだ」
健太郎と私の間に少しの沈黙が流れる。
「ううん。言われてみればそうだな。
もし、恋人の関係の終わり方が
悪い終わり方で、縁を切る事になったら
確かに、怖い。ごめんな、望美。
こんな事言って」
健太郎は優しく私の頭の上に手を置いた。
「これからも宜しくね、健太郎」
「こちらこそ」
これで良かったんだ。