私の服をびしょ濡れにしたあと、
紗羅はようやく落ち着いた。
(まぁいっか……)
「話……もうちょっと詳しく聞いていい?」
紗羅は涙声ながらも、
しっかりと状況を伝えてくれた。
「小学生の頃からずっとうち、
その人の事が好きだったんだ。
でも、もう遅かったみたい。
あの人にはもう、
心に決めた人がいるみたいだから」
心に決めた人……それは誰だろう。
だけどこの悲しみは、
健太郎の方がわかるかもしれない。
ずっと恋していた人に
振られるという悲しみは、
彼が一番共感出来るのでは
ないだろうか。
別にまだ振ったわけでもないけれど。
また紗羅が泣き始めたので、
10時になるまで慰めてあげた。
「もう、明日は学校休んだ方がいいよ」
紗羅にそう言い聞かせて、
ゆっくり家まで送ってあげた。

